泣ける話

幸せが一瞬でくずれた 後編

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幸せが一瞬でくずれた 後編です。

死んだ俺の子が化けて出たと思った。そのときがはじめて自分の妻と子供が死んだとちゃんと認識した時だったように思う。
その子が、「大人なんだから、ちゃんとしなきゃだめなんだよ!」と俺を叱りつけた。
もう混乱に継ぐ混乱だ。汗なんかダラダラ出て、俺、心臓麻痺で死ぬんじゃないかと思った。

寝起きだしなおさらさ。そのとき、部屋のドアから大慌てで隣の部屋の奥さんが入ってきた。「すみません!この子勝手にはいっちゃって・・・」そこでやっと現状を把握した。
よくよくみれば、この子は隣の家の子供で、妻がいた頃はなんども会話を交わしたことのある子だった。ドアを開けっ放しにして寝ていたところに入ってきた実在の人間だ。
幽霊じゃない。ああ、違うのかと思った瞬間、なんだかベロリと目の前の幕がはがれたような感じで、俺はその子にしがみついて号泣していた。「すいません」と「ありがとうございます」を意味不明に連発していたと思う。

あとから聞いた話では、そこの一家はひきこもっていた俺のことを心配してくれており、何度も夫婦で何をして上げたらいいか、と相談していたらしい。その相談を一人娘のその子は聞いていて、落ち込んだ大人を励ましてやろうと活を入れにきたらしい。すごいやつだよ。

とにかくその日がきっかけで俺はカウンセリングに通い、2ヶ月ほどで職場復帰。
届けも出さず休んでいた俺を休職扱いにしてくれていた叔父は快く迎えてくれ、しばらくのあいだ毎晩メシをおごってくれた。隣の夫婦とも仲良くなり、寝起きの悪い旦那を起こしてくれとか言う理由で毎朝家に呼ばれ、朝飯をごちそうになった。(かなり強引だ)とにかくもう俺の周りの人間が神級にいいひと達だったんだ。

俺は救われたし、妻と子供の死をちゃんと悲しむことができた。その娘さんが先月結婚した。(すでにその隣室の親子はマイホームを建て引っ越していったが未だに仲良くしてもらってる。)親戚が少ないからとか言う理由で式にまで俺が呼ばれ親族紹介のあとその子と話す時間があった。
俺とその子は口が悪い感じの関係で(15も年が離れているのに)、その日もあまりにも綺麗になったその子に動揺して「オメーまだ18才なのに結婚しちゃってもったいないな」などと俺が言うと笑いながら「寂しいのか、あんた?」などといいやがるので寂しいよ!と言った。

俺は昔お前に助けてもらったおまえのお父さんとおかあさんにも助けてもらっただからお前のこととても大好きだだから寂しい!とまくし立てるとまた号泣していた。
30過ぎたおっさんがヒックヒック言いながら花嫁の前で号泣だ。はずかしい。気づくとその子も大泣きだ。新郎側はびっくりしただろうな。親以外のおっさんと新婦が大泣きしてるんだから。

俺は今でも結局独り身だが、その子が困ったらなにがなんでも助けてやろうと思っている。恥ずかしいのでその子には言わないが。
もう俺にとってはあの子は自分の娘みたいなものなのだ。なにぶん前半は10年くらい前のことなのでなんだか人ごとのように淡々とした文章で申し訳ないよ。

でも本当に悲しんだんだよ。おれ・・・。





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