消防の頃の話 その3。
この話で最終回です。お付き合いありがとうございます。
そんで親も呼び出されこっぴどく怒られた挙句俺達がどついたヤツらの家を一軒一軒親と一緒に頭下げて回らさせられたんだ。
行く先々の家で俺たちは罵倒されそれでも親に無理やり頭を抑えつけられ俺たちは頭を下げた。
正義のヒーローのつもりが自分の親にまで迷惑を掛けてしまい俺はその理不尽さに
1人悔し泣きしたんだ。 ようやくほとぼりも冷めたある日、クロベーが俺とOの所にやって来てこう言ったんだ。
「今日うちの母ちゃんが2人にご馳走したいってだから遊びにおいで」と言うんだ。
別に用事もなかった俺達は即座に了承したわけ。
そんで放課後俺達はクロベーの家に行ったんだ。だがまだお母さんは仕事から帰ってなく家にはクロベーと弟しか居なかったんだ。
俺達は仕方なくファミコンはおろかテレビすらないクロベーの家で母親の帰りを待ったんだよ。
いい加減に待ちくたびれた18:00を過ぎた頃クロベーの母ちゃんが帰ってきた。
「みんな遅くなってごめんねいまご馳走するからね」と手に下げた買い物袋をテーブルに置くとエプロンを付け何やら料理を始めたわけ。 暫くすると「ぷーん」とカレーの匂いが漂って来た。
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「やったカレーだ!!」クロベーの弟が嬉しそうに叫んだ。
程なくしてクロベーの母ちゃんが「おまたせ!!」と鍋に入れたカレーを持ってきたんだよ。
それと餃子も出て来たんだがよほど好物だったのかクロベーも弟も餃子に歓喜の声を上げたんだ。
俺達にとってはご馳走と言うにはほど遠いメニューだった、貧乏なクロベーの母ちゃんにしたら精一杯のもてなしだったことだろう。
腹も減ってたんで俺達はとりあえず食べることにした。
カレーに肉はなく刻んだ魚肉ソーセージと玉ねぎとジャガイモニンジンそしてなぜかシイタケが入っていたがどうやらこれが黒田家のデフォルトらしい。 だが、味はうまかったので俺達は豪快にカレーを流し込んだんだよ。
そんで暫くするとクロベーの母ちゃんがスプーンを置き静かに口を開いて俺達にこう言ったんだ。これがまた泣けてきちゃってさ・・・。
「あんた達、平一を助けてくれてありがとう、これからも友達でいてね・・・」
そう言うと声を上げてうぉんうぉん泣き出したんだ。
俺もなんだか悲しくてそして嬉しくって涙が溢れて来て声を上げて泣いたんだよ。
Oも釣られて、みんなでカレーの味も判らなくなるほど泣きじゃくったんだ。
一言もしゃべらずただカレーを食べながら声をしゃくりあげて泣いたんだ・・・・
クロベーだけは笑ってたな。 そんでそれから中学校3年間、俺とOはクロベーを守ったんだ。
そして、卒業を迎え俺とOは地元の高校に進学、クロベーは県外へ就職することになってたんだ。
俺とOはクロべーに別れの言葉を告げたんだ
「もう俺達はおまえを守ってやれない、これからはお前が母ちゃんを守っていくんだ」
そうクロベーに言った「わかった」と力強い言葉がクロベーから返ってきたんだ。
その言葉に俺達は安心してクロベーと別れたんだ。
それから数年後県外に落ち着いたクロベーは母ちゃんと弟を呼び寄せ3人で一緒に暮らしはじめたんだ。
あのクロベーがなんと頼もしいことだろうか。
だが俺の記憶はあんときのままだ・・・。
今も思い出すクロベーの屈託のない笑顔。
あいつには幸せになる権利があるんだ。
あれから四半世紀が経ち今は俺も家族を持ち子供を育てる父親となった。
俺は子育てで悩んだ時いつもクロベーの母ちゃんの事を思い出す。
親ってのはどんなにブサイクで恰好悪くても子供の味方して守っていかなくちゃならないんだと・・・。
本当に大切なものが何かって思い知らされたんだ。本当にくろべーありがとうな!これからもよろしく。
ながながお付き合いありがとうございました!
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