その変に普通に置いておいた写真の話です。
俺がまだ小さい頃に撮った家族写真が1枚あるんです。
その写真は普通にただ撮影しただけ・・・。
実はその時父が難病(失念)を宣告されていていたそうなんだ・・・。
それほど持たないだろうと言われて、入院前に今生最後の写真はせめて家族と・・・と撮った写真らしかったんだ。
俺と妹はまだそれを理解できずに無邪気に笑って写っているんだが・・・。
母と祖父、祖母は心なしか固いというか思い詰めた表情で写っているんだ。
当の父はというと、どっしりと腹をくくったと言う感じでとても穏やかな表情だったのが印象的・・・。
母がその写真を病床の父に持って行ったんだが、その写真を見せられた父は・・・・。
特に興味も示さない様子で「その辺に置いといてくれ、気が向いたら見るから」と・・・。
ぶっきらぼうだったらしいんだ。
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母も、それが父にとって最後の写真と言う事で見たがらないものをあまり
無理強いするのもよくないと思って、そのままベッドのそばに適当にしまっておいた。
しばらくして父が逝き、病院から荷物を引き揚げる時に改めて見つけたその写真は・・・・。
まるで大昔からあったようなボロボロさで、家族が写っている部分には父の指紋がびっしり付いていたそうなんだ。
普段もとても物静かで、宣告された時も見た目普段と変わらずに平常だった父だがね・・・。
人目のない時、病床でこの写真をどういう気持ちで見ていたんだろうか。
今、お盆になると、その写真を見ながら父の思い出話に華が咲くんだよ。
祖父、祖母、母、妹、俺も・・・。
その写真の裏側には、もう文字もあまり書けない状態で一生懸命書いたのだろうと・・・・。
崩れた文字ながら、「本当にありがとう」とサインペンで書いてあった。
まじで泣いた・・・。
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