昨日おじいちゃんの葬儀に参列しました・・・。
おじいちゃんがただ1度だけ戦争中の話を私にしてくれたことを思い出しました。
医者だったおじいちゃんは軍医として従軍しフィリピンで米軍の反攻に遭いました・・・。
配属されていた野戦病院が米軍に包囲されそうになり司令部からの命令で山を越えて反対側の海岸に脱出することになったそうです。
定められた期日までに目的地に到着しなければならない強行軍です・・・。
自力で歩けない重傷患者は残し歩ける患者と看護兵だけを連れて山越えを始めたのですが・・・。
行けども行けども山また山の山岳地帯・・・。補給も無く持参した食料はすぐに底を尽きたそうです。
今では想像もできないほどの壮絶さ・・・。
本当に考えられません・・・。
水1つ汲むにも遥か眼下の谷底まで降りて谷川の水をくみまた登らねばならないという困難な道で
すぐに患者から落伍者が出始め遂には看護兵までが体力の無い者から落伍し始めました・・・。
患者は行軍の途中で倒れる者が多く看護兵の場合は小休止が終わって出発する時に立てなくなる者が多かったそうです・・・。
話を聞いているだけで涙が出てきました。
初めのうちは看護兵や仲間の患者たちが助け起こして一緒に歩いたそうですが何しろ何日も食べていないのですから皆体力がありませんとの・・・。
そのうち助けようとした者も体力を使い果たして動けなくなることが続くようになり遂に倒れた者に手を貸すことを禁じる命令が出されたそうです・・・。
おじいちゃんも飢餓と疲労でフラフラになり自分もいつまで持つか分からないと思ったそうです・・・。
それでも将校待遇の軍医ですからお付きの従兵に荷物を持ってもらうことができ何とか落伍せずに付いて行く事ができました・・・。
それでおじいちゃんは
「もう軍医と言っても名ばかりで患者を助けることもできないけれどこの従兵だけは何とかして国に帰してやりたい」
と思ったそうです・・・。
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ある日小休止が終わって出発の号令が掛かりおじいちゃんがやっとの思いで立ち上がったところいつもは先に立ち上がっている従兵が座ったままでいたそうです・・・。
おじいちゃんが声を掛けても従兵は俯いたまま返事をしませ・・・ん。疲労困憊して行軍を続ける気力を失ったのです。
それに気付いたおじいちゃんは従兵に近寄るとふらつく足を振り上げて従兵の顔を蹴ったそうです。
重い軍靴で顔を蹴られて倒れた従兵がキッとした顔で見上げるとおじいちゃんは
「おまえ!!!!親でもなければ兄でもない者に顔を蹴られて悔しくないか!悔しかったら立ってみろ!」
と精一杯の大声を張り上げて罵りました・・・。
従兵が立ち上がったのでおじいちゃんは本当に嬉しかったそうです。
その後おじいちゃんも従兵の方も苦しい行軍を乗り切って無事に目的地に到着したそうです。
しかし既にそこにも米軍が来ていたため結局野戦病院の生き残り全員が捕虜になり終戦後に日本に復員しました。
おじいちゃんとその従兵だった方とはその方が亡くなるまでずっと親交があったそうです・・・。
おじいちゃん・・・。従兵さんとまた会えてよかったね・・・。
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